昨日は大相撲の土俵に女性が乱入してニュースになりました。
力士の仕切り中とのことですから男性でも許されない妨害行為ですが、土俵はいまでも女人禁制です。女性の権利が拡大し、性別による制約が徐々に取り払われてはいますが、日本の中にもまだ女性が立ち入れない場所があるんですね。
その主なものが霊山や土俵。宗教的・伝統的理由によるものだそうです。見解が分かれる問題ですが、富士登山もトンネル内も時代とともに女性に解禁されてきたように、志ある女性に道が開かれことを祈ります。
所変わってイランです。
ここでは女性がスタジアムで男子のサッカーを観戦することが法律で禁じられています。
確かにテレビで日本との対戦試合を見たときに、観客が男性ばかりで不思議だなあという印象がありました。女性が入場できない理由は「男性の乱暴で下品な言葉を聞かせないため」なのだそうです。ただし、外国人の場合は例外的に認められることもあり、対日本戦では日本人の女性サポーターの入場が許されたそうです。
先日見た「
オフサイド・ガールズ」(英題
offside 2006年、イラン)は、こんな法律にもめげず大好きなサッカーをなんとしても見たい!応援したい!と男装をしてスタジアムにもぐりこもうとする少女たちと、それを取り締まり監視する兵士たちとのやりとりを描いた、なんとも微笑ましくユーモアのあるセミ・ドキュメンタリー映画。(以下ネタバレあります)
サッカーを扱ってはいますが、映るのは競技場の外壁や中のトイレのみでグラウンドも選手も出てきません。
でも、実際にワールドカップの最終予選のイランvsバーレーン戦の最中にスタジアム周辺で撮影されたそうで、サッカーファンの高揚、スタジアムの熱気と興奮が画面から伝わってきます。
女子禁制の規則の網をなんとかしてくぐり抜けようとする少女vs兵士と書くとなにやら不穏な空気を感じますが、そんな堅苦しさはなく、登場する人物はとても人間味にあふれています。
男装を見抜かれて、場外の留置エリアに連れてこられた少女たちは役者ではなく素人なのだそうですが、役にぴったりでいきいきと演じています。そして若い兵士は彼女たちを声高に監視しつつも、兵役義務よりも自分の家の畑や羊の世話が気になると本音をはいたりします。「試合を見せてよ」と強硬に主張する彼女たちにたじたじとなり、出入り口に立つ兵士が口頭で実況中継をさせられるはめになったり、トイレに付き添っていった兵士が見事に裏をかかれたりとお人よしの面を垣間見せます。
試合途中にスタジアムを離れ、彼女たちは兵士に連れられバスで軍の施設に移送されるのですが、そのバスの中でも感度の悪いラジオで中継放送を必死に聞き盛り上がる少女たちと兵士たち。壊れそうなアンテナを少女たちのために必死に直す兵士。
試合はイランの勝利となって、広場には国旗がはためき熱狂する人があふれてお祭り騒ぎになります。その渋滞でバスは止まり、少女たちはバスを逃れて広場の群集の中へ溶け込んでいくという、自由を暗示させるラスト。女性差別に抗議するというよりも、そんな差別の滑稽さ、無意味さを楽しく描いた作品でした。
ちなみに本国では上映されていないそうです。